あなただけのラブストーリー
自ら意志を持って…
祐介と和恵は、そのような関係だった。
会社を経営している祐介は、大学在学中に今の会社を設立したこともあり、ストイックさは折り紙付きだ。
しかし一方で、自分だけでなく他人にも厳しい人であり、横暴な態度が目立つ人でもあった。
そんな彼に喝を入れた女性が一人だけいた。和恵だ。和恵は若いだけでなく容姿も美しく、仕事はアパレルの店長をするほどのキャリアウーマンである。そんな彼女が、39歳までという条件を崩してまで祐介と会ったのは、二人の成婚コンシェルジュが同じ加藤で、その加藤が「二人の共通点がとても多いから会ってみないか」と和恵に勧めたからだ。そして「加藤さんが言うなら」と、会うことが決まったのだ。
コンタクト予定の日は、奇しくもクリスマスイヴだった。しかし当日、加藤の元に「今日のコンタクトはキャンセルします。」という祐介の電話が入る。仕方なく和恵にその旨を伝え、「こういうこともありますよ」と、一旦二人のコンタクトは無くなった。
しかしその直後、再び祐介から電話があり、今度は「時間をずらせるなら行けるけど?」とのこと。
加藤は、急いで和恵に連絡をしたが、和恵も仕事をしているためなかなか返事がない…。
そのため「まだわからないのか!」と、祐介は加藤に何度も電話を入れ、加藤の対応を非難した。
ようやく和恵から「せっかくメイクしたし、伺いますね。」と連絡が来て、加藤は祐介に返事を伝えることができ、二人のコンタクトが成立した。
ついに祐介と和恵の初対面。さっそく二人を加藤が紹介しようとすると、加藤に対して祐介が「あんた誰?」と一言。
加藤は意味がわからずあわてて「か、加藤です…」と答えると、「しっかりしてよね!さっ、行きましょう!」と加藤を怒鳴りつけて和恵を引きずるように連れて行った。
和恵は分からなかった。自分がよく知る加藤は、怒鳴られるような人ではなかったからだ。
そこで、入った店でよくよく話を聞くと、明らかに祐介が悪いことがわかった。「それはあなたが悪い!加藤さんは悪くない!」理不尽な祐介に、和恵はそう一喝した。 加藤と気の合う和恵にとって、祐介の行為はどうしても許せなかったのだ。
悪いところを先に知った分、良いところが際立って良く映ったからだ。 ときどき見せる優しさや、他人だけでなく自分にも厳しくできるところなど、和恵にとって尊敬できるところもたくさんあった。
こうして二人は度々コンタクトをとるようになった。
しかしもちろん、そこから順風満帆に
結婚へとはいかない。2ヶ月ほどしたとき、祐介がこう切り出した。「仕事が忙しくて、1ヶ月会えないから。」そして、音信不通になってしまったのだ。
祐介は、本当は忙しくはなかった。一回り以上年下の、しかも美しい女性が、本当に自分を好きなのかが不安だったのだ。
プライドの高い祐介にとって、年下の女性に振られることはとても恐ろしいことだった。だから和恵を試したのだ。
そんな祐介を、和恵は待った。祐介の弱い部分もわかっていたし、何より「自分の気持ちを片付けなければ、次に続かない」と断言していたからだ。
「自分で決めたことだから。」彼女は決して悲劇のヒロインにはならなかった。そして実際に行動した。
なんとかして連絡を取り、「あなたの気持ちはどうなの?私は本当にあなたが好き!」と伝えたのである。
この言葉で二人の仲が修正。そのあとは、あっという間に仲が深まり、ついに結婚するまでに至ったのだ。
和恵が高く見えた山を越えられたのは、自分の意志を持っていたから。どんな場面でも【自分がどうしたいか】を貫く姿勢は、今後起こる問題さえ、軽々と越える礎になるだろう。