あなただけのラブストーリー

ミッションコンプリート 第1話

“愛されたい女、愛したい女”ね……。

朝の通勤電車内、女性誌の吊り広告の見出しを読んで、冴子はふっと鼻の頭にしわを寄せた。
――どっちだっていいじゃない、相手がいるなら。
そんなの両方に決まってる。愛されたいし、愛したいのだ。でも冴子にはその相手がいない。相手がいないんだから、どっちもいまのところ満たされていない。

冴子ももう33歳。そろそろ 結婚だってしたいし、子供だって欲しい。このまま仕事だけで年老いていく気などさらさらない。だからこそ、パートナーエージェントに登録して、積極的に相手を見つけようと努力をしてきた。だけど、1年かけて32人もの男性と会ってみたが、“この人なら”と思えるような相手はいなかったのだ。
――やっぱり、ノッポな女はダメなのかなぁ。

冴子の身長は172センチだ。体重は60キロを切るときだってあるのだから、この年齢としてはスタイルを保っている方だと自分でも思う。顔だって……そんなに捨てたもんじゃない。普通よりはちょっとだけ美人だって言ってくれる人だっていた。だけど、その人とも結局うまくいかなかった。
通勤電車の中で、ヒールを履いた冴子は周囲より頭半分ほど高い。車内広告だって余裕を持って読めるし、吊り革に掴まるのだって楽勝だ。隣に立つ女性は冴子の胸ほどまでしかない身長で、吊り革に掴まれなくて手すりをしっかりと掴んでいる。冴子から見ても、そんな女性は可愛いと思う。男性から見ればよけいだろう。
でも、このあいだパートナーエージェントに行ったとき、成婚コンシェルジュの伊藤さんが嬉しそうに駆け寄ってきて言ったのだ。
「冴子さん、背の高い男性が入会してきたわよ!」
もうあきらめようか、と思いかけていた冴子だったが、身長190センチというその男性を紹介してもらうことにした。33人目、もう最後の賭け、と言ってもいい心境だった。

「そうですね……まずはちょっとだけ痩せることですね」

パートナーエージェント横浜店では、隆志が成婚コンシェルジュの岡田にぴしゃりと言われて、頭をかいていた。
「そうですよねえ。190センチで90キロはちょっと重すぎますよねえ。わかりました、頑張ってダイエットします!」
屈託なくそう宣言する隆志を見て、岡田はつい笑ってしまうのだった。
「岡田さん、正直言うと、僕は35歳になる今まで女性とお付き合いしたことがないんです。だから、デートとかってどうしたらいいのかわからないし、想像がつかないんです。何か、ここだけは気をつけなさい、みたいなポイントってありますか?」
この方って、ホントに素直で憎めない人だわ……そう思いながら、岡田は思い切って突っ込んだアドバイスをすることにした。
「もうちょっとファッションに気を使ったほうがいいですね。そういうポロシャツもいいですけど、もっとこざっぱりとしたジャケットとか、そういう方がデートにはいいですね」
わかりました、ジャケットですね……そう言いながら隆志は熱心にメモを取っている。
「あと……女性とお店に入ったときは、どこに女性を座らせるか、気をつけてあげてくださいね。夜景の見えるお店ならちゃんと夜景が見える席に着かせてあげる、そうじゃなかったら奥の席に座らせてあげるのが普通です」
なるほど、そうかあ……いちいち相づちを打ちながら隆志はメモを取る。
「とにかく、あとは女性の話をよく聞いてあげることが大事ですよ。ちょうどこの方が、女性にしては背が高くていらっしゃるから、隆志さんにちょうどいいんじゃないかしら。なかなか可愛らしい方だし、年齢的にもちょうどいいと思いますよ」
「わかりました!この冴子さんと会ってみます。あとは今夜から夕飯を抜いて、さっそくダイエットしますから!」
がんばるぞ!そう言いながら去って行く隆志を見送りながら、岡田はまたクスリと笑ってしまうのだった。

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