あなただけのラブストーリー

ミッションコンプリート 第3話

「ねえ、岡田さん」

隣の席の伊藤が、ちょっと深刻は口調で岡田に話しかけてきた。
「実は、例の隆志さんと冴子さんの件で、冴子さんからメールが来てるの。それで、やっぱり彼女、ちょっと悩んでるみたいなのよ」

伊藤のデスクの上のPCを覗かせてもらうと、確かに冴子からのメールが表示されていた。そこには、あれから3度目のデートもしたのだが、それもドライブデートで、彼はデート中はよくしゃべるものの、「好き」とかそういうことは言ってくれないので、正直彼の気持がわからなくなってきた、という悩みが綴られていた。
「メールでは、君のことが好きだよ、なんて送ってくるらしいんですけどね。やっぱりメールだけじゃ、ねえ」
「そうですね、不安になっちゃいますよね……」
岡田は、隆志にメールをすることにした。

「隆志様 冴子様との交際は順調に進んでおられるようですね。ところで、これは老婆心ながらのアドバイスですが、冴子様に会っているときに、隆志様の気持を伝えてあげることが大切ですよ。手をつなぐとか、「好きだよ」と言ってあげるとか。実際にそう伝えてあげることが大事なんです。ちょっとだけそんなことも頭の片隅に置いて、冴子様と会ってあげてくださいね」

隆志からの返信はその日のうちに届いた。
「岡田さま わかりました、実際に口で言わないとダメってことですね! そういう女心ってやっぱり全然わかってなかったですね、僕。 では次回、「手をつなぐ」「好きだと言う」このふたつを岡田さんから与えられたミッションとして、実行することにします!」
しかし、隆志には思いもよらない出来事で、ミッションの遂行は失敗するのである。

隆志と冴子の4度目のデートは、現場近くの駅前で待ち合わせになった。

デート、七夕祭りの花火をふたりで見る、というデートだった。
約束の時間より少し早めに着いた隆志は、改札口の前で冴子を待っていた。今日は近場だし、お祭りの花火見物だからと隆志はリラックスしたTシャツにジーンズ、という服装だったのだが、改札口から出てくる冴子を見て、そんな緩んだ気持は一気に吹き飛んでしまった。

冴子は、浴衣姿で現れたのである。
――うわ、うわ~! 浴衣、似合うな~!
「ごめんねお待たせして。凄い人だね~!さ、行きましょ」
いつものように笑って歩きだす冴子を慌てて追う隆志は、右手と右足が同時にでているんじゃないかと思わず確認したくなるほど、ぎくしゃくとしていた。
――ド、ドキドキする~!
その日の夜、岡田の元に隆志からのメールが届いた。

「岡田さま 今日は冴子さんと4回目のデートでした。ふたりで七夕祭りに行ったんですが、彼女の浴衣姿にドキドキしすぎて、ミッションを実行できませんでした(汗)すいません!でも、ふたりでゆっくり、ホントにいろんな話をすることができて、彼女との距離がとても縮まったように思います。僕が女性とつきあったことがない、とういうことも正直に話しました。いま僕は、冴子さんのことをとても愛おしく思っています。想像していたようなものとは全然違うけど、これが恋なのか、という実感が涌いてきました!」

それから2週間が過ぎた7月の末、パートナーエージェントでは、
成婚コンシェルジュの伊藤がニコニコしながら岡田を呼び止めていた。

「岡田さん、あれから冴子さんと隆志さんのこと、連絡ありました?」
「いえ、こちらにはメールは来てないんですけど、冴子さんから何か連絡があったんですか?」
「ありましたよ~」
伊藤の元に届いたメールには、冴子からのその後の顛末が綴られていた。

「伊藤様 隆志さんとはあの後、横浜で会う機会がありました。山下公園のベンチに座って、ふたりで長いこと話をしました。その後ふたりで手をつないでホテルのラウンジバーにお酒を飲みに行き、それで別れたんですが、彼はちゃんと自分の気持を言葉にしてくれました。とても嬉しかった。その後彼がくれたメールには「冴子さんのことを守ってあげたい。可愛らしいと思う。冴子さんといるととても安らげるし、これが恋なのか、と思う」って書いてありました。とても彼らしいストレートな告白ですよね。 私も彼といるととても安らげます。こんな気持になるのは初めてです。 伊藤様、私とうとう33人目で見つけたみたいです。」

――ようやく ”ミッションコンプリート” ね。
晴れ晴れとした気持で、岡田は大きく伸びをした。

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