あなただけのラブストーリー

セカンドチャンス 第1話

あーあ、ホントに、やんなっちゃう……

育美は、安物のオフィスチェアの背もたれをギシギシ言わせながら、大きく伸びをした。そんな様子を見て、向かいの席の後輩が笑いながら茶々を入れる。
「育美さん、まだ午前中だってば。子供じゃないんだから、まだイヤになるには早いんじゃないですかぁ」
「そーね、アンタの言うとおり」
向かいの席に苦笑いを返すと、育美は姿勢を正してPCのディスプレイに向き合った。しかし、その視線はなかなか経理ソフトに焦点を結ばないのだった。
――もう、アイツったら何を考えてるんだろ。
前夜の誠とのやりとり。何気ない会話の中に 『早くハッキリして!』というシグナルをビンビンに送ったはずなのに、それに気付いたのか気付かないのか、誠のお気楽な様子には全く変わりはない。最初の頃はそれでもまあ、まだ知りあったばかりだし、と気にしないようにしていた育美だが、近ごろでは自分でもわかるくらい、イライラが募っているのだった。それがまた自分でイヤになる。

パートナーエージェントのパーティーで知りあってすぐ意気投合

ふたりが、お互いの部屋を行き来するようになるまで時間はかからなかった。住所が近いこともあり、最近の誠は毎晩のように育美の部屋にやってくる。育美もそれをあたり前と受け止めていた。だからこそ、当然すぐに『結婚』の話になるものだと思っていたのだが、誠を見ているとまるで能天気に今の状況を楽しんでいるだけに見える。
昔の育美だったら、自分の方からガンガン男にアプローチして、有無を言わせずに行動を起こすところだが、いまさらそういうわけにもいかない。なんといってももう43歳なのだ。しかも育美は一度結婚に失敗している。いわゆる 『バツいち・アラフォー』というおっきなレッテルを背負っているのだ。だからこそ39歳で初婚の誠に自分から結婚を迫るようなマネは、できないししたくもない。それゆえ、誠の方から言い出してくれるように、育美はジリジリしながら待っているのだった。
――はぁ……やっぱり私って、男運が悪いのかなあ…。

20代で結婚・離婚を経験した育美は、自他共に認める「男運のない女」だった。

男性に縁がないわけではない。離婚した後もそれなりに男性とつきあってきた。ただそれが、夢追い人や独身貴族を気取ったサラリーマンなど、たまたまちょっと結婚に向かないタイプだっただけなのだ。友人に言わせると「育美はロクデナシ男が好きなのよ」ということになるのだが、自分で意識してそういうタイプを選んできたわけではないのだ。付き合った男がたまたまそういうタイプだっただけ、なのだ。
そう思いながら30代を過ごしてきたけれど、さすがに40代になるとそうも言っていられない。そろそろ子供を産むにもギリギリの年代になってきたし、これからそうチャンスは残っていないのだ。しっかりした相手を見つけて、自分の人生を真剣に考えないと……。一大決心をしてパートナーエージェントに登録してみたものの、最近では自分で自分がわからなくなってきた。
――私ってホントに結婚したいのかな……。

誠と出会って、意気投合してすぐ "この人なら" と思った。

誠も同じ気持でいてくれてると思ったのに、最近ではそれも信じられなくなってしまった。誠もいままでの男性と同じく、私との結婚を真剣に考えてはいないんじゃないだろうか?
誠だって結婚したいからパートナーエージェントに登録したはず。でもちっともふたりの関係を進めようとしてないのはどうして?もちろん、いまの関係は楽しいし、それを壊したくはない。だったら無理して結婚にこだわらなくてもいいんじゃないだろうか?でも、でも……。
育美の心は車輪を回すハムスターのように、カラカラと空回りし続けるのだった。

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