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家事はやりたい方が、呼び捨てしない、玄関まで見送る――澤夫婦のハッピールール

結婚願望はなかったけれど。結婚して得られたもの

佐藤 茂(タメニー株式会社(旧株式会社パートナーエージェント) 代表取締役社長。以下、佐藤)

佐藤

ここまで結婚するまでのお話を中心に伺ってきました。「結婚したい」とまったく思っていなかったのに、結婚してみてどう感じましたか?

澤 円(大手外資系IT企業 業務執行役員、テクノロジーセンター・センター長。琉球大学 客員教授。)

澤 円

結婚前より、圧倒的に怒らなくなりました。

澤 奈緒(造形作家。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。)

澤 奈緒

彼はよく怒っていたんです。私にではなく、自分に対して怒ってしまう。自分のミスが許せないんですね。

結婚する前は「この怒りが私に向いたらどうしよう?」と思っていたのですが、そんなことはありませんでした。

今はそれが分かっているので、彼が怒っているときはどこかに行って、放っておくようにしています。私が帰ってくるころには落ち着いて、機嫌もよくなっています(笑)。

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森本 千賀子(株式会社morich 代表取締役社長。以下、森本)

森本

お互いの望むことをよく理解してらっしゃるんですね。結婚生活の感想として、円さんは以前、奈緒さんがよく褒めてくれるとも仰っていました。

澤 円

ええ、とても褒めてくれるんですよ。

澤 奈緒

私たちは自分自身に自信がなかったんです。だから「彼をたくさん褒めたらどうなるのかな。ちょっとやってみよう」と実験してみました。

私は褒めるのに全然エネルギーを使いませんし、人の長所を見つけるのが得意なので、どんどん褒めるようにしています。

澤 円

結果的に、褒められるのはとても良かったですね。彼女が褒めてくれるようになってから、いい人に出会う確率が跳ね上がりました。

それに、彼女と2人での行動が増えたことも結婚して変わったところです。結婚して一緒にいるうちに、お互いが隣にいることが2人にとって当然のことになりました。いろいろなイベントに、夫婦で招待されることも増えました。

結婚したことが本当に、いい出会いを増やすとても良いきっかけになったと思います。

「お金ではないかたちで返そう」。夫の金銭的な支援を受け入れられるように

澤 奈緒

私は結婚して5~6年間、「彼の人脈を、私がいいように利用してしまっているのではないか」と抵抗を感じていました。彼の知り合いは、私が彼の妻だから私によくしてくれる部分は当然あります。それに甘えてはいけないと考えていました。

けれどある時、「そうして切り離して考える方が不自然かもしれない」と思ったんです。「もう少し甘えてみようかな」と考えるようになり、それからは自然に受け入れられるようになりました。

金銭面などで彼が日常生活や創作活動を支えてくれることに対しても、最初は罪悪感ばかり抱いていました。今は「私なりに、お金ではないかたちで返せるものがきっとあるだろう」と思っています。ですから、金銭面では彼に甘えてしまってもいいのではないかと考えるようになりました。

澤 奈緒

森本

「お金ではないかたちで返せるものがある」という考え方は素敵ですね。

澤 奈緒

先日見たニュースの中で、専業主婦が「専業主婦だから、夫の稼いでいる給料を自分が使うことに罪悪感がある」と言っていたんです。私たち夫婦の価値観は、それとは違うように思います。

澤 円

お金に縛られる考え方は、とてもつまらないと感じます。

家庭内で「俺が稼いできているんだから偉いんだ」と言う男性もいるでしょう。けれど、本当の意味で「稼いできている」男性がどのくらいいるのか疑問です。

僕は、本当に「稼いでいる」状態とは、自分のバリューを提供してその見返りを受け取ることだと考えています。そうではなく、ただなんとなく働いて給料をもらっている男性の方が、多いのではないでしょうか。自分のバリューを提供せずに受け取る給料は、会社にとっては何も生み出さない経費でしかありません。

言い方を変えるなら、「名刺がないと、あなたにどれだけの価値があるの?」という話ですね。自分のバリューを提供できない人は、会社を退職して名刺が使えなくなった時点で、いつも不機嫌で店員に怒鳴り散らすような生活になってしまうかもしれません。悲惨な生き様になってしまうと思います。

「澤円の妻」になってほしくない。「澤奈緒」のまま人生を楽しんでほしい

森本

私から見ても、本当に仲のいいご夫婦だと思います。それだけ仲のいい2人でいるために、普段からどんなことを心掛けていますか?

森本 千賀子

澤 円

多くの女性は、結婚すると名前を失いますよね。例えば「〇〇さんの奥さん」「〇〇君のお母さん」と呼ばれるようになるわけです。

けれど彼女が「“澤”奈緒」と名乗るようになったのは、僕の妻になったからではないんです。「澤」という名字を気に入ってくれたからなんです。

僕自身、彼女に「澤円の妻」になってほしいわけではなく、あくまでも「澤奈緒」として人生を楽しんでほしいと思っています。「澤円の妻」として、何かをしてほしいとはまったく思っていません。

澤 奈緒

家事についても「『澤円の妻』だから私が○○をする」ということはありません。例えば、私は料理が嫌いなので、彼に任せています。

澤 円

僕は料理が大好きですから。やりたい人がやればいいと思っています。

こうした夫婦の関係について、世の中の男性はマインドセットを変えていくべきだと感じています。夫婦だからといって「してもらって当然」と考えるのではなく、何かをしてもらったときは「ありがとう」と感謝する関係の方が絶対にいいと思います。

森本

素晴らしい考え方だと思います。

澤 奈緒

私の方は、結婚した当時は「旦那さんはこうあるべきだ」という思いもありました。けれど10年かけて、そういう考え方はなくなっていきました。

澤 円

今は「ポンコツな夫婦だ」と分かっているんですよ(笑)

澤 奈緒

お互いに(笑)

この別れが最後かもーー玄関まで行って、扉が閉まるまで見送る