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今の日本には女性の力が必用。女性活躍のため、企業ができること

卵子凍結の費用を助成、社員の健康状態をアプリでチェック――先進企業のユニークな制度

平田

永井さんが勤めているLiBの取り組みについてお話を伺いましたが、他にも女性が働きやすい環境をつくるため、ユニークな制度を考え出した企業もありますよね。

永井

卵子凍結から保存までの費用を助成してくれる制度もありますね。PR会社のサニーサイドアップが考案した「Dear WOMAN」制度です。

森本

卵子凍結にはお金がかかりますし、なかなか周囲に言い出せない人も多いです。制度を設けることで、オープンに話せる雰囲気をつくったことも素晴らしいですね。

永井

サニーサイドアップは他にもプロポーズや大切なデートの日など、恋愛の“勝負日”に休める「恋愛勝負休暇」制度をはじめ、32のユニークな制度があります。

制度の内容自体ももちろん大切ですが、企業側が社員にとって働きやすくなる制度を積極的に整えていくことで、「会社として、社員の人生をケアしていく」というメッセージを発信していくことも重要だと感じます。

また、制度を作るだけでなく、制度を使いやすくすることも大切です。例えばLiBの場合、子どもが発熱したときに会社を休む場合は、チャットで「375発令」と書き込むだけで、その日は休みを取ることができます。また、子どもの状況によっては、勤務をリモートワークに切り替えることも可能です。保育所は子どもの体温が37.5℃以上になると預かってくれない所が多いため、「375制度」と名づけました。会社に電話して「子供が熱を出したので、休みます。申し訳ありません。」と毎回毎回、謝るのは精神的な負担になりますから、チャットに書き込むだけで済むようになって、制度が使いやすいと社員から喜ばれています。

平田

やり取りをシンプルにして、制度を利用する社員に後ろめたい感情を抱かせないように配慮しているのですね。「制度があっても、職場の空気を読むと気軽には使えない」という人は多いですから、そういった気配りは、今後の働き方の改善のために重要だと思います。

森本さんもユニークな制度に詳しいと思いますが、特に印象に残っているものはありますか?

森本

女性に限った制度ではありませんが、Webメディア運営会社のじげんが導入した健康増進のための制度が面白いと思いましたね。社員にマッサージを定期的に受けさせたり、健康状態を表すパラメーターを計測するアプリの使用を義務付けたりしているんです。そのアプリが計測した健康関連の数値を上司が毎日チェックしていて、疲れている社員には「今日はもう帰っていい」と伝える。社員の健康状態を漏らさずチェックできるいい仕組みだなと感じました。

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永井

勤務時間自体を短くした会社もありますね。成果を出すことを前提に、1カ月に120時間働けば、160時間労働したとみなす制度です。

森本

勤務時間を減らすという点では、電通も月に1回、週休3日にする制度を試験的に導入しましたね。

森本

しっかり休みをとることは、仕事の質を上げるために必要なことです。有休を取得することを「申し訳ない」と感じる人がいますが、私は決してそう感じる必要はないと思っています。体調を崩し、当日急遽休みを取るよりも、計画的に休みをとる方が周囲に迷惑もかけないと思います。病気なら、かわいそうだから有給はあたりまえと思う方が多いと思いますが、自分の健康管理のために病気ではない時に、有給を取ることは、予防という意味でも計画的という意味でもよりよい有給の使い方ではないかと思います。

例えば、自分の勉強のために有休をとってもいいと思うんです。有休をとって、何かのセミナーに参加したり、美術館に行ったりして、リフレッシュする。会社でずっと同じ環境で仕事をしていて行き詰まってしまっている場合でも、リフレッシュすることで新しい考えが浮かんできて、悩んでいた難題の解決策を思いつくこともありますから。
昔のように、会社で長時間働き続けていればそれでいい時代ではなくなりました。リフレッシュしながら、仕事に生かせるヒントを積極的に取り入れる働き方へと切り替えていくことが大切です。
ですから、「働き方改革」は「休み方改革」と言い換えられると私は考えています。今後は、休むことの価値が見直されていくのではないでしょうか。

本当に「女性が活躍しやすい企業」かを見分けるには。プロが伝えたい転職活動Tips

平田

女性が活躍しやすい職場を整えている企業の取り組みを伺ってきたわけですが、今日はせっかく、キャリア支援の専門家でいらっしゃる永井さんと森本さんにお越しいただいています。キャリアを大切にしたい女性の中には「今の職場で働き続けていては先がない」と感じて転職を考えている人もいると思いますが、「女性が活躍しやすい企業」かどうか、どうすれば見分けがつくものでしょうか?

永井

私は会社との“相性”がすごく大事だと思うんです。会社についての情報をロジカルに調べることももちろん重要ですが、“相性”は人と人が形づくっていくものです。“相性”を知るには実際にその会社で働いている人と直接話をすることがとても大事だと思います。

分かりやすく言えば、面接で採用担当者に会ったときに「この人と仕事をしたいな」と思えるかどうか。「この会社で働きたい」と感じられるのであれば、その感覚を大切にすべきだと思います。

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森本

私も、実際にその会社で働いている女性社員と会ったときの直感が大切だと思います。

女性のための制度を設けている会社であっても、対外的なPRとして制度を作っただけなのかもしれません。本当に女性社員が制度を活用できているのか、見極める必要があります。女性社員と実際に話すことができれば、相手の表情や空気から、その会社での働き方や、会社の女性社員に対する想いや扱い方が伝わってくると思うんです。

平田

転職活動の選考中は一般的に、人事担当者や採用部署の責任者など、企業側が選んだ社員とだけ面接するケースがほとんどですよね。女性が転職するとき、選考を受けている企業に対して「面接とは別の場で、女性社員と会って話してみたい」と頼んでもいいものでしょうか?

永井

もちろんです。むしろ「社員には会わせられません」と言うような会社はどうかと思います。積極的に頼んでみて、嫌な顔をした企業の選考は考えたほうがいいかもしれません(笑) 転職はどちらかの片思いではなく、企業側と転職者側が両想いにならないといけませんから、気兼ねせずに頼んでください。

森本

面接以外の場でも社員と会って、会社のことをよく知った上で入社を希望してくれる人材は、入社が決まった後、その会社に定着する可能性も高くなります。ですから社員に会ってもらうことは、企業側にとってもメリットがあることなんです。

女性が“働き続けられる”だけでなく、“働きやすい”社会へ

平田

ここまでお話を伺ってきまして、「永井さんや森本さんの世代が、今の日本を女性が“働き続けられる”社会にしてくださったんだ」とあらためて感じました。次は私たちの世代が、未来の日本を女性にとって“働きやすい”社会に変えていかなくてはいけません。

森本

私たちの世代と若い世代との最大の違いは、男性の意識だと感じています。育児に対する男性の思考自体が、根本的に変わってきています。

男性が「育児に参加する」と堂々と言えるようになりましたし、育児を楽しんでいる男性も多いです。むしろ育児をしない男性が批判を浴びるようになってきていますよね。いずれは男性も育児することが当たり前になり、「イクメン」という言葉は特別なものではなくなって死語になるのではないでしょうか。

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永井

今は新卒男性のうち8割が育休取得を希望しています。行政からも「男性の育休を義務化する」という話が出てきていますよね。

男性の考え方が根本的に変わってきている今、「男性だから」「女性だから」という昔からの当たり前にとらわれない生き方を模索していく必要があると思います。

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