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19歳で父親になる選択を正解にしていく。あるミレニアル世代が迷いなく結婚した理由

大学1年で赤ちゃんができた――「産む」のは大前提、「どう養うか」しか気にならなかった

佐藤 茂(タメニー株式会社(旧株式会社パートナーエージェント) 代表取締役社長。以下、佐藤)

佐藤

佐藤 茂

このQOLというメディア、実は「20代の若者、ミレニアル世代のリアルな結婚観や家族観を知りたい」というのが立ち上げた一番の動機なんです。今回は、20代の若者、ミレニアル世代の代表として、西村さんにいろいろと語っていただきたいと思っています。

まずは、19歳で父親となったときにどんな気持ちを抱いたか、お話を伺えないでしょうか。

西村 創一朗(株式会社HARES 代表取締役、複業研究家/働き方改革コンサルタント。以下、西村)

西村

西村 創一朗

私自身、「19歳で結婚して父親になる」とはその日を迎えるまで夢にも思っていませんでした。ただ、小学校1年生のころから、「いつかはいいお父さんになってやる」とずっと思っていたんです。

私は3人兄弟の長男として生まれましたが、父親のドメスティック・バイオレンス(DV)に母親がすごく苦しむのを、ずっと目の当たりにしてきました。そうした家庭環境で育つと、「自分は結婚したくない」と思う人もいるかもしれません。ですが私は、逆に父親を反面教師として「奥さんからも子どもからも『お父さんはかっこいい』と思われるような家族を築きたい」と小さなころから夢見ていました。

そして高校に入学して、妻に出会ったんです。高校時代から「大学へ進み、社会人になって、何年か経って落ち着いたら結婚しよう」と普段から言い合うような、いわゆる“バカップル”でしたね。それが大学1年の夏休みの最後に、妻のお腹の中に子どもがいることが分かったんです。

普通、予定外に赤ちゃんができたら、「産む」か「産まない」かをまず話し合うと思います。でも私たち夫婦にとっては、「産む」ことはすでに心に決めていて、「生活費を稼ぐために大学を中退しようか」「どうやって親に認めてもらおうか」ということをひたすら考えていました。

八王子駅にある産婦人科に一緒に行き、「赤ちゃんがお腹の中にいる」ことが分かった帰り道、駅前のファストフードチェーンの店内で今後について話し合いました。主に正社員の求人が載っているフリーペーパー『タウンワーク社員』を店内で見つけたので開いてみたら、「未経験から月収30万円」とうたう求人を見つけて。妻に「30万稼げば、何とか生きていける。俺、大学やめて働くよ」と誓って、その足で妻の実家に向かいました。

妻のお母様の前で2人とも土下座して「産ませてください」とお願いしていたところにお父様が帰ってきたんです。妊娠した事実と自分たちの意思を話したところ、「気持ちは分かった。けれどこの場で『認める』とか『認めない』とか言える状況ではないので、今日は帰ってほしい」と。

それから家族会議になったそうですが、ご両親は最初大反対。けれど、交際のごあいさつを含め、妻のご両親にはすでに何度か会っていましたので、お二人とも私の家庭の事情や苦労して大学まで進んだことをご存じでした。最後には「そこまで苦労して入った大学をやめる覚悟までできているのなら、2人を信じてもいいんじゃないか」と、二人の決意を受け入れていただきました。ご両親からは「今すぐに、大学を中退して高卒で働くよりは、ちゃんと大学を卒業して、それから働いた方がいいだろう」と助言いただき、妻の実家に住まわせてもらう“マスオさん生活”をスタートすることになったのです。

人生の選択肢に正解なんてない。選んだ道を正解にしていく

森本 千賀子(株式会社morich 代表取締役社長。以下、森本)

森本 千賀子
森本

大学を中退して働くことになっても構わない。西村さんも奥様も、そのくらいの覚悟がないと19歳で親にはなれませんよね。

西村

私も妻も、ものすごく不安はありました。けれど、妻から「赤ちゃんができた」と聞いたときに、「うれしい」という気持ちが溢れ出てしまったんです。

妻と知り合う以前に、別の女性とも交際したことはありましたが、本当に心の底から「一緒になりたい」と思えたのは妻がはじめてでした。「いつかは結婚したい」と思っていた女性との間に子どもができた。頭で考えるより先に、幸せでいっぱいになってしまったんです。

不安は自分で乗り越えていくしかない。妻と結婚すること、19歳で父親になることにまったく迷いはありませんでした。

佐藤

若いうちから結婚することには経済的な不安もありますし、「もっと素敵な相手と出会えるかもしれない」という可能性を閉ざすことにもなります。そういった理由から、若くして結婚することには勇気が必要で、タイミングを逃してしまう人も多いと思います。

西村

私たちも、あのとき子どもができていなかったら、どうなっていたか分かりません。大学生活の中で別々に過ごす時間もありますから、それぞれに出会いがあって別の相手と結婚していた可能性もゼロではありません。

“可能性”という意味では、インターネットが広まって“可能性”が広がり過ぎたことで生じた不幸もあると思うんです。「白馬の王子様はどこかにいるはず」「もっといい人と出会えるかもしれない」という可能性が残っていると、そう簡単には「この人と結婚しよう」と決断できなくなります。

その意味で私は、「産む」か「産まない」かという選択肢だけが提示されました。あのとき、その決断を迫られなかったら、大学1年で「この人と結婚しよう」という決断はできなかったでしょう。社会人1年目になっても、気持ちを固めるのは難しかったかもしれません。

ただ、私は子どものころからずっと「人生の選択肢に正解なんてない。選んだ道を正解にしていくプロセスが人生だ」という価値観を持っています。「大学をやめることになっても、『産む』という選択を正解にしてやろう」と考えていました。

交際中の彼女と結婚して、本当に大丈夫だろうか。もっと他により良い可能性はないのだろうか――。受験や就職、転職など、人生の節目で決断するときには、同じようなことを考えることになるのでしょう。けれどそこで正解を探そうとするのではなく、選んだ道を正解にしていく。それが大事だというのが私の考えです。

森本

成熟した考え方ですよね。

佐藤

本当に素晴らしいです。西村さん、実はもう130歳くらいなんじゃないかと疑ってしまいます(笑)。

「かっこいい父親」になりたいのに、今の自分はスネかじり。理想と現実のギャップに苦悩