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「婚活」誕生から10年、”産みの母”が語る変わったこと/変えられなかったこと

「婚活」ブームが生まれて10年、
“産みの母”が伝えきれなかったもうひとつのメッセージ

「婚活」ブームが生まれて10年、“産みの母”が伝えきれなかったもうひとつのメッセージ

佐藤 茂(タメニー株式会社(旧株式会社パートナーエージェント) 代表取締役社長。以下、佐藤)

佐藤

「婚活」という言葉を白河様と山田教授が世に送り出してブームになってから10年経ちました。「婚活」という言葉を10年聞いて育った今の20代の若者たちは、どのような結婚観を持っていると感じていらっしゃいますか?

白河 桃子(以下、白河)

白河

「婚活時代」で婚活ブームが起きてから10年経ち、2018年1月に刊行された「広辞苑」第7版にも「婚活」が収録されることになりました。
「婚活」以前の時代について考えてみますと、両親が主導して結婚相手を決めるお見合い結婚、そして会社の中で結婚相手をマッチングする社内結婚が、“結婚装置”として機能していました。1975年ごろまではベルトコンベア式で何も考えずに受け身で流されていても、ほとんどの人は結婚できる時代が続いていたのです。

それが1980年代に入ると“結婚装置”が機能しなくなり始め、90年代半ばごろからは社内結婚がどんどん衰退していきました。バブル経済が崩壊し、学校を卒業しても正社員として会社へ入れない若者が増え始めたのです。

そうした社会の変化を分析し、「これまで『自然な出会い』と思っていたものは、実は全部社会の仕掛けだった。これからは結婚したい人は行動しないと結婚できない」と、山田昌弘教授と一緒に提言したのが『「婚活」時代』だったのです。

この10年を振り返ってみると、「婚活」ブームのおかげで「結婚したいなら行動しないと」という意識付けはできたと思います。ただ、「昭和結婚観からの脱却」というところまでは導けませんでした。

白河 桃子

本当は「女性は『養ってもらおう』と思うばかりでは、もう結婚できないよ。男性も家事や育児を自分事として」というもうひとつのメッセージも届けたかったのですが、旧来からの「男性が働いて稼ぎ、女性は家事や育児を担う」という家族観、男女役割分担の意識は根強く、イノベーションを起こせませんでした。

そして10年が経ち、「婚活」意識が高まった結果、「よりよい結婚をしたい」という選良意識が強くなってきたように感じます。

団塊世代までは100%近い男女が結婚していたわけですが、別の角度から考えると、ドメスティック・バイオレンス(DV)を続ける男性など、いわゆる“だめんず”を引き受ける女性がどこかにいたことになります。ベルトコンベア式の“結婚装置”が機能しなくなった結果、女性は必ずしも“だめんず”と結婚しなくてもよくなったわけです。

「それなら、私は“だめんず”を引き受けたくない。誰でもいいから結婚するのではなく、よりよい相手を見つけて結婚したい」と考える女性が増えてきたわけです。その背景には結婚情報サービスの普及もあるのでしょう。特にインターネット上でマッチングするサービスの影響は大きかったと思います。「住所」「年齢」「年収」などの希望条件を入れて検索すれば、時には1000人を超える異性がHitするわけですから、いくらでも候補になる相手はリストアップされます。これが「選良意識」の明確化です。

2000年ごろにはインターネットが浸透し、家電などを購入するときには検索・比較して、一番リーズナブルな商品、求める機能を備えている商品を選び出すようになってきました。結婚相手を探すときにも家電と同じように、ネットで条件を入れて検索してよりよい結婚相手を見つけ出そうとする“価格.com”婚志向が広がっていったように感じます。

これまでは社内という“釣り堀”の中で相手を探していたのが、インターネットという“大海”の中から相手を選べるようになりました。こう表現すると良いことのように思われるかもしれませんが、逆に結婚が難しくなってしまった側面もあります。昔はたまたま会社で隣に座っていた異性に対して「この人が運命の相手だ」と疑わずにいられたのに、今では「本当に運命の人なのか。大海に出ればもっと出会いはあるはず」と考えてしまう人も増えてきました。

そして2017年、大きなターニングポイントとなる出来事がありました。結婚情報サービスの「ゼクシィ」が「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」というテレビCMを打ったのです。結婚を促す立場にあった保守的なメディアのゼクシィが、初めて「結婚しなくても幸せになれる」というメッセージを発信したのを見て、また次のステップに進んだなと感じました。

ゼクシィのCMを見てあらためて感じたのは、女性にとって結婚には、生存戦略として『適確か?』という側面もあるということです。団塊世代の女性は、自分では稼げない人がほとんど。「結婚しないと生きていけない」から、生存戦略上、結婚することが、仕方がない選択肢だったのです。ところが今の女性にとっては、結婚することが生存戦略として正解とは限らない。どんな男性と一緒ならこの時代サバイバルできるのか? まして自分だけでなく女性は当然子どもを産んだ後のことも考えます。子育てのときも安定した家計を維持できるか――といったように将来の出産・子育てのことまで見据えて、生存戦略として「私は結婚した方がいいのか、悪いのか」と冷静に判断するようになったのです。例えばまったく家事育児をしない男性と結婚して、子どもを産んでワンオペ育児になり仕事をやめたら収入は0円。その先に離婚でもしたら、本当に大変です。

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